成書に記するが如く半陰陽には真仮の二種を区別する。前者は一身にして男女両性の生殖腺を有し、後者は一性の生殖腺を有するも其の外陰が他性の観を呈せるものである。
真性半陰陽には骨盤内に於て各側に一箇の睾丸及び一箇の卵巣を有するものもあるが、併し此様な者よりも割合に多いのは、一側に睾丸、他側に卵巣を有するものである。オボロンスキーは右側に睾丸、左側に卵巣を具へた一人の人間を見たことがある。其の解剖的標本は今に猶ほプラーグ大学の標本室に貯蔵されてあるが、之を見ると、右側には睾丸、副睾丸、輸精管、左側には卵巣、輪卵管があり、また一側には子宮と膣、他側には一の摂護腺がある。之と同様なものはマ ワア・ドロテア・デルリールといへる真半陰陽者で、此の者は男性的性欲を有し、陰茎が勃起し、射精する能力を具へてゐたが、死後之を解剖した処、膣と一対の輪卵管を有する一の子宮とを具へ、その右側には一箇の睾丸、左側には一箇の卵巣を有つてゐた。
然るに真半陰陽者の中には、相離れた両性生殖腺を体内に有つて居るのでは無くして、一つの生殖腺の中に他性の生殖腺を含有してゐるやうなものがある。即ち卵巣内に睾丸組織を有つてゐるが如きもので、此様なものを「オヴオテスチス」 Ovotestis と称する。卵巣と睾丸とが一緒にあると云ふ憲味である。ノイゲバウエルは数度まで妊娠した婦人に於て其の卵巣内に睾丸組織を証明したことがあるが、実に珍らしい実例である。
前記のマリア・ドロテア・デルリールの他、シユルツエーの記述したホーマンと云ふ者もまた模範的の真半陰陽者である。此の者は男女両性の交接機能を有し、其の骨盤と乳房とは全く女性的であり、また小陰唇も能く発育し、定期性月経もありて男子と性文を営んでゐたが、然るに他の一方に於ては、その体質、音声、鬚髯共に男子の如く、尿道下破裂を伴へる五仙迷許りの陰茎を有し、右側の陰嚢には睾丸と精系とを具へ、また能く精液を射出して能く婦人と交接したといふことである。