婦人が妊娠をハツキリ自覚するのは第四ヶ月又は五ヶ月に達した時ですから、堕胎を企てるのは此の時期が最も多い。だから川柳にも『中条へ五つ月置いて同じ顔』といふのがありますし、又『たしなみ草』にも『尼の腹ふりさけ見れば五月め六月たらぬおろし子の念仏云々』とあります。中条の暖簾をくゞつた妊婦は大抵野合私通のために妊娠したものですが、『中条で、たびだびおろす陰間の子』といふ川柳のあるのを見ますと、男娼を買って妊娠した後家や女中などに中条の厄介になった者の尠くなかったことも想像されます。