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『月水早流し』といへる堕胎薬は既に元禄の頃からあったもので、元禄十六年版の『男女御土産調法記』の中には、月水早流しと朔日丸との一種の堕胎薬の記事がありますから、元禄時代の頃から此種の薬に盛んに行はれたことが分ります。そして、右二種の堕胎薬の値段は月水早流しは代金三百七十二文、朔日丸は代百文とありますから可なり高価です。大近松の『堀川浪の鼓』の中に女主人公のお種が夫の留守中に姦通して妊娠したので、人に隠して下女に堕胎薬を買ひにやり、一貼を七分宛、三貼を二匁一分で買つたといふ文句があります。