我国最古の法典たる『大宝令』には私通姦通に対する刑罰の規定がありますが堕胎に対しては何等の刑目もありません。又た爾来歴代の官符にも之を悪徳犯行として禁止処刑したことも全然見当りませんから、堕胎は公然若くは公然の秘密に行はれたものと解せられます。さればこそ『源朋集』の中にも堕胎したことを詠んだ和歌を載せ、又た『今昔物語』にも性空上人の母が毒を服して堕胎を企てたことを公然明記して居るのです。