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元禄時代の頃には男娼が遊女のやうに嫖客から落籍されたこともありました。例之ば藤田小平次が淀屋辰五郎のおやぢに受け出され、嵐喜代三郎が紀伊国屋文左衛門に落籍されたが如き例があります。しかし又一面には遊女扱ひ、妾待遇を受けるのが嫌やになり或は馬鹿臭くなつて、中途から遁げ出したのもありました。寛文延宝の頃に艷名をうたはれた美少年俳優の玉州主膳、市村市之丞などは若い盛りで遁世し坊主になつたと伝へられてゐます。