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飛子に関する文献は、あまり多く見当りませんが、西鶴の『好色一代男』や『永代蔵』に飛子のことが見えます、『永代蔵』に『ある時、多武峰の麓の里、仁王堂といふ所に、京大阪の飛子の隠れ家をしるべの人にそゝのかされ、こゝに通ふことの募りて恋の二道をかけ云々』とあり、又た『好色一代男』には世之助が十四歳の時、仁王堂の飛子を買ふことがあつて、『仁王堂と申し、京大阪の飛子、しのび宿なると、よろづに附けて我れ知り顔に語りけるに、今宵一夜と思ひながら、色なきかたに舍りはと云々』と書いてあります。京阪の飛子のまわり行く処として大和の仁王堂はその頃可なり世間に知られてゐたらしい。大和の僧侶共を相手に男色を売つてゐたのでしよう。