湯島の蔭間荼屋に抱へられた男娼の風俗に就いて或人から聞いた処では、いづれも銀の雨天の蔦銘の定紋打つたのを頭に挿し、裾模様に立やの字、虚無僧下駄をはいて、新年の元旦などは振り袖姿愛らしく追羽根をつく有様など殆ど真の女性のやうであつたそうです。但し客の僧侶に件つて広小路の大師の縁日や又は上野の山内に招かるゝ時は小姓風の男仕立てゞ外出したといふことです。