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男娼が差し櫛をしたのは、遊女の風に傚つたのです。遊女は二枚櫛をさしたもので、元来は京の遊女の風俗でした。万治版の『吉原鑑』の挿書を見ますと、無櫛か或は一櫛です。『傾城三国志』に『三つ笄に二つ櫛、実に京風の髮かたち』とあります。その遊女の風を真似て京都では延宝の末頃から普通の若い女も二枚櫛をさすことが流行し、大阪の荼屋女や私娼にも伝播しました。元禄版の『傾城仕送大臣』に道頓堀の荼屋女のことを記せる文句のうちに『投げ島田に二つ櫛』とあります。男娼も赤た此の風を真似たのです。