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若衆歌舞伎は今さら詳しく説くまでもなく、男色の流行に乗じて起つたもので、京都にて既に元和三年、江戸にては寛永元年の頃に出来たのであります。それは彼の出雲お国の女歌舞伎に引続いて、佐渡島正吉等の女歌舞伎が遊女を女俳優にして嫖客を釣つたのと同様に、美少年を歌舞せしめて男色好まぬ僧侶や武士を寄せ集めたがため、女歌舞伎と共に流行したのであります。そして女歌舞伎が風俗紊乱の廉で禁止せられてからは一層盛んになり、上流下流社会を通じて愛玩せられるやうになりました。そのため美少年の色に溺れて風紀を乱す悪弊が益々起つてきました。もつとも武士道の慣習として此の不自然な男色を却て黙認し或は奨励するが如き傾向もありましたがため、若衆歌舞伎は這般の風潮に乗じて盛んに流行したのでありますが、併し男色に溺れて身を誤るものが武士社会に現れるやうになつてきましたので、幕府も之を放任することが出来なくなつて遂に承応元年禁止したのであります。併しB君も言はれたやうに、男娼的の醜業を営んだがために禁止されたのでありません。この事に就てはD君が御調べになつて居ります故、同君にお譲り致します。