事情境遇に由る女嫌ひ

第三種の女嫌ひは、自己の事情境遇から女嫌ひになったもので、ショーペンハウエルが女子を熱罵し、之を嫌悪すること甚しかったのは、少年時代より実母との仲が悪く、毫も母愛の温味を解してゐなかったのと、また一つには壮年時代に徽毒に感染したがためである。又ストリンドベルグの女嫌ひも、其の名作『馬鹿者の懺悔』Beichte eines Toren に徹して知らるゝが如く、その一身の境遇事情に関係があり、又『男女と性格』Geschlecht und Charakter を著して女性を罵倒したワイニンゲルも、婦人に対して不幸不愉快なる経験を有ってゐたからである。