第一種の女嫌ひは、性欲の欠乏に基くもので、此の如き者の多くは先天性精神障碍に因るのである。這般の実例は、クラフトエビング、ハムモンド、フォーレル等より報告せられたが、併し男子に於て性欲の仝然欠乏するものは先づ極めて稀有といっていゝ。但しフユールブリッゲルの説に依れば、男子に於ける先天性性欲の欠乏は、他の学者の恩惟する程に稀なので無いとのことである。世の中には極端な女嫌ひがあって、女の匂ひを嗅いでさへ嘔吐を催うすといふやうな男子もあるが、併し此の如きものを以て必ずしも性欲の欠乏せるものと看做すことは出来ない。その中には後に述ぶる処の性欲顛倒や、或は一種の強迫観念に属する潔癖等に基く者も尠く無い、性欲の欠乏した者は女嫌ひと云ふよりも寧る女に冷淡無頓着なもので、所謂『性的冷淡 SexuelleKalte, Frigiditut 』と称せらるべきものである。